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●消費者として自己完成する子供たち

現代の子どもたちが幼児から少女・少年に急速に成長し社会性が成熟していく時に、子どもたちはどのように社会との接点を築いていくのでしょうか?

今の子どもたちが社会で1人前として認められる最初の時は、大人の家事の手伝いや町内会での草むしりや祭りの参加などよりも、まず買い物をした時にえられるお客様としての自立ではないでしょうか?

買い物をする時には子どもも老人も関係ありません。お金は等価交換を実現したすぐれた道具ですので、子どもでも買い物する時は1人の消費者として立派に社会に参加していきます。
子どもたちは消費者として早熟に成長し自立していきます。そして売り手と買い手の交渉術を確実に習得していきます。

買い手の基本姿勢としては売り手のだす商品を値ぶみし、値切ることが大事です。売り手がだす供給物に無関心な姿勢をしめしクレームをつけ、少しでも買い手に有利な条件で購入しようとします。よりいい条件で交渉をすすめるために、不機嫌な姿勢をしめすという態度を子ども達は消費社会のなかで習慣としていきます。

またその不機嫌な姿勢は、学校の授業を聞く時にも発揮されます。学校の授業をまるで商品のように値踏みし、あまり子ども達にとっては良い商品に感じられない授業を、できるかぎり消費しないように値踏みしようと努力します。

このような姿勢は不幸にも家庭のなかでも展開されます。
まず外で仕事をした父親が、仕事のがんばりをアピールするための手段として疲れを表現するために不機嫌にけだるそうに家族に応対します。まは母親も家事労働の疲れをアピールするため不機嫌さを競うようにアピールします。そして子どもも家族の1員として十分認められるように塾やクラブの疲れを必死にアピールします。

このように私達の高度消費者社会のかでは不機嫌さは他者ととかかわる際の重要な要素であることが、わかってきます。

さて右の女の子の絵は、現代美術作家で人気の高い奈良さんの絵ですが、絵の中の少女はいつも不機嫌な顔をして1人で乳白色の空間の中で、こちらを見つめ返しています。まるで世界との接触を不器用に、そして不機嫌に見つめることで関係を築こうとしているようです。若い世代に絶大な人気をもつ この絵は私達の社会の問題を告発しているのでしょうか?

(参考図書「下流志向」内田樹)



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